執筆者:鈴木
皆さん日本救急医学会が「熱中症診療ガイドライン」というものを公表していることをご存知でしょうか。
以前までは、「熱中症診療ガイドライン2015」だったのですが、今年の夏に「熱中症診療ガイドライン2024」が公表されました。
熱中症にまつわるガイドラインは、他にも
環境省、東京都教育委員会
等が公表しているものもあります。
今回は、日本救急医学会が公表している「熱中症診療ガイドライン2024」が、前回のものとどのように変わったのか?をご紹介します!!
ただ皆さん自身でも必ずガイドラインを確認するようにしてください!!
ガイドライン→https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf
ガイドラインの変更点

2015から2024での主な変更点は2つです。
❷「Active Cooling」の定義などを見直し
1つずつ解説していきますね!!
熱中症の重症度分類の変更
まずは熱中症の重症度分類がⅢからⅣへと変更になりました。
今までは熱中症の一番重症度の高い分類がⅢでしたが、その中でもさらに注意を要する最重症群を「Ⅳ型」としました。

欧米諸国では体温を診断基準に含めたBouchama基準(B-HS)がある。
その分類での「重症」が今回の「Ⅳ型」にあたる。
新しい分類のⅢ型とⅣ型の違いは以下の通りです。
Ⅲ型:Ⅳ型に該当しないⅢ型(2015)
そもそも熱中症ガイドライン2015で定義されているⅢ型って何だっけ?
という方も多いと思います。
Ⅲ型の定義としては、下記の3つのうちいずれかを含む場合をⅢ型としています。
2.肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害)
3.血液凝固異常(急性期DIC診断基準にてDICと診断)→Ⅲ型の中でも重症型
これを見て、現場で判断できなくない?と思いますよね?
はい。その通りです。
なぜならⅡ型の時点で医療機関を受診することが推奨されており、Ⅲ型については基本的に医療機関で診断されるからです。
もちろんスポーツ現場でもⅡ型を放置すれば、Ⅲ型に移行することはあります。
そして従来のⅢ型はかなり幅が広いです。
Bouchama 基準の Heat stroke(重症)としては、
深部体温≧40℃、中枢神経障害、暑熱環境への暴露
となっています。
これと日本のⅢ型を照らし合わせると、軽度の意識障害(JCS2 程度)のみがBouchama基準の重症と一致します。
要は日本のⅢ型はJCS2程度の見当識障害がある熱中症から、DICのような重度な熱中症まで幅広く当てはまるようになっていました。
それを変更したというのが大きな変更点ですね!
ただⅣ型の「深部体温40.0°以上」がネックになってきます。
なぜなら深部体温を正確に測ろうとすると、直腸温を測らないといけないからです。
なかなか日本では、スポーツ現場で直腸温を測るのはハードルが高いですよね…
ただ深部体温が測れないからⅢ度かⅣ度か分からない!!となって、対応が遅れてしまうのだけは避けたいところ…
ということで、「qⅣ度」という概念も提唱されました。
ここまでを図にまとめると、こんな感じです。

Ⅰ度とⅡ度はそこまで難しくはないと思います。
Ⅱ度よりも症状が悪い場合は、まずⅢ度に該当するかを確認します。
現場で素早く判断できるところで言えば、「JCSが1以下か2以上か」です。
*もちろんけいれん発作や小脳症状があればⅢ型ですが。
JCS1:だいたい清明であるが、今ひとつはっきりしない
JCS2:見当識障害がある(場所は時間、日付が分からない)
JCSが2以上なのであれば、スポーツ現場で対応できる範疇を超える可能性もあるので救急車要請も視野に入れながら、「Active Cooling」を実施します。
*Active Cookingについては後述します。
一応ガイドライン上では、「入院治療の上、Active Coolingを含めた集学的治療を考慮する」となっています。
ここは年齢的な背景や選手の既往歴、現場での医療体制等にもよるとは思うのですが、ここで即救急車要請でも間違いはないとは思います。
もしかしたらⅣ型かも?でも深部体温が測れない…
そんな時には表面体温だけ測り、「qⅣ型」に該当するか確認します。
仮にqⅣ型に該当する場合は、早急な医療機関での治療が必要になるため、迷わず救急車要請でいいと思います。
そして救急車が到着するまでは「Active Cooling」を実施します。
もし直腸温が測れるのであれば測って、40°以上の場合はⅣ度、40°未満の場合はⅢ度となります。
まあどちらにせよ、qⅣ型の時点で相当状態は良くないので、早急に救急車要請でいいと思います。
JCS→https://www.kango-roo.com/learning/3082/
GCS→https://www.kango-roo.com/learning/3121/
Active Coolingの定義見直し
そして2つ目がActive Coolingの定義の見直しです。
2015年のガイドラインでは、氷嚢/蒸散冷却/水冷式ブランケットなどを用いた従来の冷却法/ゲルパッド法/ラップ法など細かく個別の冷却方法を記載されていました。
ただ2024年のガイドラインでは、
何らかの方法で、熱中症患者の身体を冷却すること
と定義し、包括的な記載に統一しました。
要は2015年までは、体表冷却しましょう!!体内冷却や血管内冷却もやりましょう!と記載されていましたが、新たな冷却法がどんどん開発されているので、
「Active Coolingしましょう!!」
と一言で表せるようになったということです。すごく簡単にいえば…
ただ、冷蔵庫に保管していた輸液製剤の投与、クーラーや日陰の涼しい部屋での休憩はActive Coolingではなく、「Passive Cooling」の範疇だとしています。
そしてこのPassive Coolingは重症患者への有効性を示すエビデンスが不足しているため、Ⅲ型以上であれば迷わず「Active Cooling」をするように推奨されています。
水分補給の記載にも要注意!
ちなみに、「水分補給」の表現も今回のガイドラインで少し整理されました。
2015年のガイドラインでは、「水とNa(ナトリウム)の補給」という言い方がされていましたが、2024年版では「水と電解質の補給」に表現が変更されています。
これ、めちゃくちゃ地味な変更に見えるんですが、実はめちゃ大事です。
なぜかというと、「汗」って水分だけじゃなくて、ナトリウム以外にもカリウム、クロールなどの電解質も一緒に失ってるんですよね。
だから、ただの水をガブガブ飲ませるのではなく、OS-1などの経口補水液(ORS)を活用したり、スポドリも必要に応じて使い分けるのがベストです。特に発汗が激しいシーンでは要注意です。
個人的には、軽度の脱水が疑われる選手にはORSを推奨しています。
もちろん重症例になれば点滴も必要になりますが、まずは「水だけ」ではないということを意識することが重要ですね。
J-ERATOスコアでも早期リスク評価が可能!
熱中症の重症度を早期に判断する指標として、2024年版ガイドラインでは「J-ERATOスコア」というスクリーニングツールも紹介されています。
このスコアは、病院前の段階で以下の6項目に該当するかをチェックするだけ。
- 呼吸数 ≥ 22回
- 意識障害(GCS < 15)
- 収縮期血圧 < 100mmHg
- 心拍数 ≥ 100回
- 体温 ≥ 38.0℃
- 年齢 ≥ 65歳
→それぞれ1点、合計6点満点で評価され、スコアが高いほど重症リスクが高まります。
特に5点以上で、入院・ICU管理・死亡リスクが高まるとされており、「qⅣ型かどうか」判断に迷ったときの補助ツールとしても有用とされています。
小児の熱中症対応にも注意が必要!
ガイドラインでは、小児への対応についても新たに細かく記載されています。
✔ 乳幼児では深部体温測定が困難なため、「皮膚の熱感」や「反応の鈍さ(JCS換算)」を観察して判断
✔ 子どもは脱水進行が早いため、水分補給の目安量やタイミングがより重要
また、小児では体表面積が大きく、冷却が効きやすい反面、低体温にもなりやすいため「冷やしすぎ」にも注意が必要です。
現場でできるActive Cooling実践ガイド
「Active Coolingが重要」とは言っても、「具体的に何をすればいいの?」という疑問は当然あると思います。
現場でできる冷却法の例をまとめました👇
✅ 冷水に浸す(バスタブや簡易プールがある場合)
✅ 氷嚢や保冷剤をわきの下・首・足の付け根に当てる(効率は微妙)
✅ 霧吹き+うちわや扇風機で蒸散冷却(割と効果的)
✅ クーリングベストや冷却スプレーも有効(手軽で使いやすい)
そして忘れてはいけないのが、「Passive Coolingだけではダメ」という点です。
Ⅲ型以上の可能性があれば、これらのActive Coolingを躊躇なく即実施しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
深部体温なんて測れないよ…という方が多かったとは思いますが、一応qⅣ型の深部体温を必要としない分類ができたのでは個人的には良かったなと感じています。
深部体温が測れないから対応が遅れた。これはもう通用しないので、さっさと表面体温を測ってしまいましょう。
あとは変更点ではないですが、JCSが1以下か2以上か。これはスポーツ現場では1つの大きな指標になると感じています。
熱中症なんだろうけど、緊急性があるのは分からない。そんな時はJCSで判断するといいと思います。
繰り返しになりますが、必ずこのコラムで終わらさずに、ガイドラインもチェックしてくださいね!!!
ガイドライン:https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf