肘内側側副靱帯完全断裂の保存療法

執筆者:陣内

この回では肘、内側側副靱帯損傷に対する保存療法について解説いたします。

注意:保存療法を推奨するものではありません、治療方法については患者それぞれの背景を踏まえ、必ず医師の診断の下、決定するようにしましょう。

肘内側側副靱帯:UCLとは?

肘の内側の静的安定機であり、3つの繊維束(前斜走、後斜走、横走繊維)より成る。

前斜走繊維が肘の外反及び前腕の回旋の支持に対し最も優先し作用する。また、肘の伸展強制を伴う地面への落下などの際にもUCLは上述のように機能する。

UCL損傷とは?

画像診断はMRI及び超音波画像、ストレスX線などの選択肢があり、理学所見(圧痛、肘の外反動揺性)等を加味し、重症度分類となる(Ⅰ度:微細損傷Ⅱ度:部分断裂 Ⅲ度 完全断裂)

肘の過伸展損傷の際には手関節屈筋及び円回内筋の損傷の可能性も考慮する。

下:実際のUCLⅢ度損傷のMRI画像(内側上顆部より剥がれているのが確認できる)

 

患者の背景による選択肢の変化

Ryan et al.2020 によるとUCLの損傷に観血療法を選択するか、保存療法を選択するかはオーバーヘッド動作が必要なアスリートか否か、がポイントとなりそうです。

論文中では、治療の結果は患者やスポーツの要求に左右され(Over head athlete vs Non Over head athlete)RTSの期間に影響を与え、Over head athleteの場合の保存療法は予後が良くない、とあります。

Dodson et al.2021 の報告ではNFLにおいても同様のケースに保存療法が選択される場合もあり、UCL完全断裂の保存療法では 平均67.3日のRTSとなっています。

治療法の選択に関する意思決定は、①患者の背景 ②競技の要求 ③UCL損傷の重症度 ④上肢の機能に与える影響、を加味し選択することになるかと思います。

Criteria Based Rehabilitation

私が実際に使用したプロトコルを添付させていただきます(英文ですスミマセン)

復帰の指標として、上肢機能のテスト(YBTUQ)を用いることにより、肘関節の支持機能、上肢のリーチ機能の評価が入ります。単純なOKCの筋力のみを鍛えるのではなく、上肢の機能としてのリハビリテーションをすすめていくための指標になるかと思います。

Phase1は主に症状の軽減と、患部の保護、筋力トレーニングの導入を目的とする。

Phase2は筋力強化、神経筋促通トレーニングを目的とし、OKC、CKC共に導入していく。

Phase3は上肢機能の回復、競技特異的な動作のトレーニングを目的とする。

YBT-UQ テスト

以下参考動画です。